※ゲーム終了後の話です。嫌な方はブラウザバックをば。

◆狸牛/記念日

同じフロアに部屋を持った8人。
女子高生に教師、司書にエンジニア…屈強なトレジャーハンターたちの中、浮きに浮いていた
その8人が、島に隠された莫大な遺産を発見したなんて、この上ない奇跡だったのかもしれない。

そもそも、メンバーの半数が島の文化だの人生経験だの参加者の保護だのが目的だったから、
ワケありのメンバーで各々必要な金額を引いた残りを、更に全員で山分け…なんて、
本職のトレジャーハンターさんたちが聞いたら、まず間違いなく怒られそうなオチだった。

そんな変わり者が大金を手にしたところで、そもそもが変わり者だから、派手に豪遊するハズもない。
「遺産は何に使われるんですか?」とマイクを向けられた数人の答えは、「貯金します」「研究費」。

報道陣の期待をことごとく裏切り、それぞれがそれぞれの"ごく普通の"生活に戻った。



オレに言わせれば、財宝を見つけたことなんて、奇跡のうちに入らない。
奴と出会えたこと、それが最大の奇跡であり、最上の幸運であり、最高の幸福。

島を出て2年、同棲―奴に言わせれば"同居"だが―を始めてからは、明日で1年になる。

もう少し、あと少し時間がたてば、記念日だ。

ゆっくりと秒を刻む時計。

あと5秒。

4秒。

3秒。

2秒。

1秒。

カチリと、針が0時を綺麗に指した。

オレの腕の中で眠りこけている恋人に、キスを落とす。
起こさないように、そっと抱きしめ直して―オレも目を閉じた。



目覚めたら甘ったるいキスをして、一緒に出掛けよう。
のんびりと並んで歩いて、行きつけの喫茶店で食事をしよう。
オレの好きな店と、ついでにお前の好きな店を覗いてみようか。
気に入ったシルバーアクセがあれば、買ってやるよ。

なんたって、記念日なんだから。


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これにてひとまずの終了にございます、ありがとうございました。
また別の話を書いたとしても、全ての結末はここ、"めでたし めでたし"です。

2009.4.