◆狸牛/甘い眠り

一休みしているうちに、眠ってしまったんだろう。
ソファの上、ハイネックにジーンズ姿のファルが、気持ちよさそうに小さな寝息を立てている。

そっと頭を撫でると、薄く目を開いた。

「いいよ、眠ってて」

聞こえたのかどうかも怪しいけれど、ファルはそのままうとうとと瞳を閉じた。

髪を上げる気力すら湧かなかったのか、自然なままの柔らかい赤毛が、思うままにソファに散っている。
無防備な幼い寝顔も手伝って、堪らなく可愛い。

ここ5日ほど、ファルは他のフロアのトレジャーハンター達に護衛を請われて、忙しそうにしていた。

ファルやリュウの戦闘能力、フォウ姐さんの知識やライオの技術、イプの治癒能力…
とても遺産探索には適さないだろう、と囁かれてきたこのフロアの人間の能力は、
思いのほか、探索に適していたらしい。今では、多くの人間が助力を請いに訪れるようになった。

元々人嫌いのリュウは返事すらしないし、マイペースなフォウ姐さんとライオは、無理をしてまで他人に
付き合おうとはしない。人見知りの激しいイプは、ラヴィやキャーと行動を共にする事で、援助要請を回避している。

ファルは、外見こそ少々頼りないけれど、凄まじい戦闘力を秘めている。
そして、何より―人が良すぎる。困っている人間がいれば、放ってはおけない性質だ。

自分がどんなに疲れていても、請われれば駆けつけずにはいられない。
それが誰かの命に関わることならば、無理はしないだろうが…あいにく、危険要素はなかったらしい。

ライオから聞いた話によれば、ファルは護衛を終えた後も、彼の格闘技術に興味のある連中に請われて、
遅くまで戦闘指導や手合わせの相手をしていたらしい。

昨日はついに、帰りをファルの部屋で待っていたオレの目の前で、戻った途端に何も言わずに
ベッドに倒れこんだくらいで…傍目からも、相当疲れてるのが分かった。

ソファに座って、ファルの赤い髪を撫でる。ぴくりと微かに反応して、けれどファルは眠ったまま。
疲れてるのは、分かってる。分かってるんだけど。

唇の端にキスを落として、服の中に手を滑り込ませる。
起こしちゃ可哀想だとは思うんだ。ただ、体が勝手に動くというか。

滑らかな肌を撫でると、目は閉じたまま、ひくんとファルの体だけが反応した。
ハイネックを捲り上げて、胸に舌を絡める。ボディソープの匂いが鼻をくすぐって、心臓が鳴る。

小さく甘い声を漏らして、再びファルの瞳は薄く開いた。

「んぅ…?」
「寝てていいよ、疲れてるんだろ?」

頭を撫でると、まぶたが重そうに閉じた。
普段は面白いくらいに敏感なファルだけど、今日は流石に眠気のほうが勝ってるってワケか。

膝裏と肩に手を差し込んで、ゆっくりと抱き上げる。
小柄な体は完全に弛緩して、抱き直すと、ころんと頭がオレの肩に寄りかかった。

そのままベッドまで運んで、白いシーツの上に下ろす。起きる気配はない。
ソファでも構わないけど、やっぱりちょっと狭いし…そのまま眠らせるにも、こっちのがいいだろ。

再び服の裾から手を入れて、肌を撫でた。捲り上げて、両手首を押さえて、胸を舐める。
ひくひくと体が揺れた。顔を見ると、眉を寄せて―でも、目は閉じたまま。

ベルトを外して、留め具も外して、中途半端にジーンズを脱がせる。
直に握りこむと、びくんと腰が跳ねた。

「あ…?せんせ、何…」
「ファーは眠ってていいよ、勝手にやらせて貰うから」

まだ覚醒しきっていないんだろう、乱れた服を正そうともせずに、ファルはきょとんとした顔を向けた。
触れるだけのキスをして、握りこんだ手を緩く動かす。くたりとファルの体がベッドに沈んだ。

「はぁ…んっ…せんせ…やめて、眠い…んぅっ」

舌を絡め取って、胸と下肢をゆっくりと弄る。少しずつ、ファルの顔に赤みが差してきた。

それでも、頭は眠りを欲しているのか、ファルの目は気だるげに閉じようとしている。
オレの愛撫に、体だけが、ひくひくと敏感に反応する。

「ん、ぅ…」

唇を重ねて、深いキス。逃げる舌を絡めて吸うと、苦しげに眉が寄った。
音を立てて唇を離す。紅い瞳が薄く開いた。

「ファー、明日の予定は?」
「休むつもり…だけど…んっ」

「なら、シてもいい?」

にっこりと笑って見せれば、ファルは頬を薄く染める。

「な、ファー…お?」

ふいにその腕が伸びてきて、ベッドに押し倒された。
その気になったのかと思う隙も与えずに、ファルは仰向けのオレの胸に頬を寄せて、目を閉じた。

「あの、ファルくん?」
「んー…夜、相手するから…今は一緒に寝よ、ね?」

にっこりと笑いかけられて、甘えるみたいに頬をすり寄せられたら…流石に逆らえる気がしない。

静かな寝息が聞こえ始める。
抱きしめた体は温かくて、誘われるように、まぶたが重くなってくる。

目が覚めたら、甘ったるいキスをして、食事をして…夜は思う様、互いの熱に溺れてみようか。
明日はオレもオフにして、久々に二人っきりでゆっくりしよう。

こんな風に甘美な眠りに落ちるなら、悪くない。
ファルの重みと体温を心地良く感じながら、オレは甘い眠りに、沈むように身を委ねた。


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こ…これくらいなら大丈夫かな…大丈夫だよね…(´A`;
年齢制限作品のボーダーラインて、曖昧すぎて分かりませんよ!

別館作るのは面倒だs